2022.01.12
2022年1月に開催される専門職高等教育をテーマとした国際シンポジウム(主催:QAPHE/専門職高等教育質保証機構)で、敬心学園の小林光俊理事長が講演を行います。その際に発信する内容について、東京保健医療専門職大学の宮田雅之教授と宮地恵美子教授と対談を行いました。4回シリーズで掲載いたします。
宮地これまで3回に渡り、専門学校における「職業実践専門課程」の創設、「専門職大学」の制度化、そして東京保健医療専門職大学の設置についてお聞きしてまいりました。最終回の今回は、今後を見据え、小林理事長の考える日本の高等教育機関に関する課題をお聞かせ頂きたいと思います。
小林これまでわが国の職業教育は、様々な制度の立ち上げを通して、その歩を進めて参りました。しかしながら、様々な課題が残されています。1つめの課題は、18歳人口の減少に関わる問題です。日本の18歳人口は減少の一途を辿っています。1992年に200万人近かった18歳人口は、2020年には116万人と6割以下になり、さらに減少することが予測されています。こうした状況を踏まえると、高校を卒業したばかりの18歳人口を対象とした高等教育機関の経営は、ますます厳しくなることは容易に想像できます。そこで、日本が他の国と比較して十分に手当てできていない「社会人の学び直し」に目を向け、ターゲットを高卒生から社会人へシフトして行くことが必要ではないでしょうか。
小林さらに、国や社会のグローバル化の進展に合わせ、世界中から高等教育機関へ留学生を多く受け入れ、我が国の人口減少社会やダイバーシティ社会への活性化のためにも、国を開いていくことが必要です。
宮田2020年に約96万人いた高等教育機関への進学者は、18歳人口をベースにすると、2035年には約80万人に減ってしまう、との推計もあります。今こそ、高卒生を中心とした高等教育から、日本の労働生産性の向上に寄与する「仕事関連の再教育への参加率」の向上に目を向けた「社会人の学び直し」のための高等教育の推進が求められていると思います。
小林2つめの課題は、高等教育を受けたい人の阻害要因についてです。大学や専門学校で学びたい、社会人として学び直しをしたい、と思っていても、それが実現できない人達がいます。学び直しの障害として、「学費」に関する問題が最も大きいと考えられます。
宮地高等教育機関の「学費」は決して安くありません。日本は長年に渡る不景気を経て、さらに昨今はコロナの影響もあり、多くの国民が経済的に困窮しています。そうした中、2020年度に「修学支援制度」が創設されました。
小林私はこの制度の実現にも携わっており、制度化され大変うれしく思っていますが、より一層の制度の拡充が必要と感じています。なぜなら、「貸与型」ではなく「給付型」の支援制度の充実が是が非でも必要だと思うからです。
小林国の力は人材の力です。日本はこれまで高等教育に対し、公的支出を諸外国に比べ十分に行ってきませんでした。そのツケが、「失われた30年」につながっていると私は考えます。
今後、世界では急速にグローバル化とダイバーシティが進むでしょう。高等教育の世界でもますます国際競争が進むはずです。その中で個人、そして企業等が勝ち残るために、さらに日本の発展のためにも、様々な分野で世界水準の高度な実践力を備えた人材を多数育成・輩出することが喫緊の課題となっています。従来の大学ではなし得なかった質の高い職業教育を実践し、多くのイノベーション人材を育成していくことが一層求められます。
国と民間が一丸となって、様々な知恵を結集し、職業教育の発展に尽力することこそが、日本の発展につながると確信しております。<以上>
※小林理事長が講演を行う一般社団法人専門職高等教育質保証機構主催の国際シンポジウム(QAPHE国際シンポジウム2022)の詳細は、QAPHEのホームページをご確認下さい。
https://qaphe.com/seminar/futureevent/20220127intersympo/